インド門と、世界遺産のレッド・フォートを見学する予定でしたが、1月26日が共和国憲法記念日で、そのお祝いの準備のためか、両方とも閉鎖中でした。 つまり入場観光ができないということで、それは仕方がありませんが、ガイドさんは、「走っている車から写真を撮れ」と言って、レッド・フォートの下車観光すらスルーしようとしました。 私たちが日程表を見て「下車観光ってなってるのに」と言っていると、あわてて車を止めて、レッド・フォートの近くまで連れて行ってくれました。 その後、クトゥブ・ミナールとフマユーン廟は、入場できましたが、相変わらず私たち二人だけ放し飼いにして、自分は、ほとんど案内せず休憩です。 デリーは大都会だけに、車が多く、そこを乱暴な運転で通るのがこわくて、「もう少し、ゆっくり運転してくれ」と頼んでみました。 でも、この日が最終日で、『デリー観光後、空港へ行かなければいけないから、ゆっくりできない』と言い訳して、言うことを聞いてくれません。
昼食後、空港まで行く間に、日本の旅行社の恒例のアンケート用紙を渡されました。 こんな二人っきりの旅行でアンケートがあるとは思いませんでしたが、旅行社としてはこれがないと、現地ガイドや現地旅行社がちゃんと仕事をしたかどうかわからないので、絶対必要なのでしょう。 アンケート用紙を渡した途端、車は急にゆっくり走り始めて、安全運転をアピール。 「今さら遅いわ!」というところですが、ガイドさん、ドライバーさんのこの姑息さが嫌でした。 また、車がゆっくり走るせいで、私たちには予想外のことが起きました。 少しでも車が停止すると、わらわらと物乞いの人たちが車に寄ってきて、窓越しにお金をせびります。 片腕のない男性、赤ん坊を抱いた女性、よぼよぼの年寄り、小さい子供など、多種多様な乞食の人たちです。 私と娘は、窓を開けて、持ってる限りのルピーを、右に左に上げましたが、この状況が空港まで延々と続く感じがしました。 ついに、「もう、ルピーを窓からばらまきながら走りたい」と私は言いましたが、これほどまでの貧富の差を、政治は何もできないのか、と悲しくもあり腹立たしくもありました。
娘と私の最初の旅行は、2003年のエジプトです。 エジプト人のガイドさんが、フランスや日本に留学経験があるという、今思えば、超お金持ちの教養あるご令嬢でした。 ピラミッドの観光に行くと、物売りと物乞いが群がってきます。 そのとき、ガイドさんが言ったのは、「施しをしないでくれ」と言うことでした。 「何もせず人からお金を貰うと、働こうとしなくなる。それでは本人や国のためにならない」と言う、まさに正論であり、その国の人が言うのだからと、それ以降、途上国へ行っても、物乞いにお金を上げたりしませんでした。 それから7年も経ちましたが、このインド旅行ですっかり考えが変わりました。 エジプトのガイドさんが言ったのは、要するに『現実を知らない金持ちのたわごと』です。 生まれつき、大金持ちで高い階層の彼女には、働きたくても仕事がない、ということを想像できなかったのでしょう。 お金がなければ、教育も受けられず、結局、働くとしても単純な肉体労働しかありません。 ましてや、インドのように根強い身分制度があって、仕事は世襲制で、選ぶことが出来なければ、乞食の子供は乞食をするしかないのです。 これ以降、どの国に行っても、物乞いにはお金を上げ、物売りにはぼったくられるまま、ということを敢えてやっています。 もちろん根本的解決にはなりませんが、JICAなどに参加して、途上国のために働くなどということができない自分にはそれぐらいが精一杯です。
最後に、ダンさんが「インドはどうでしたか?」と聞いてきました。 決まり文句とはわかっていましたが、私は真面目に答えました。 「遺跡は素晴らしいけど、汽車が遅れたり、交通ルールが守られていない。カースト制度がなくなって、国民みんながルールやモラルを守れば、もっとインドは発展すると思う」
でも、ダンさんには言葉の意味がわからなかったのか、あるいはルールやモラルなどを守ると言うことが理解できなかったのか、何も答えませんでした。 インドに行った人は、はまって何度でも行きたい人と、二度と嫌だ、という両極端に分かれる、とよく聞きます。 私と娘は、田舎のインドは好きだけど、都会のインドは嫌いだということになるでしょうか。 そもそも、しっかりした旅行社の団体旅行で、添乗員がいてバスで移動していたら、本当のインドはわからないと思います。 バスには物乞いの人たちは寄って来ないだろうし、一流ホテルではチップを無理矢理、取られることもないでしょう。 日本のように、格差が少なく、モラルやルールが守られている国の国民としては、インドはタフな心と体がないと旅ができないと思いました。
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【2013年〜2015年のニュースから見るインドの現状】
《2013年》
■ インド政府の統計では、性的暴行が20分に一件。
■ 2012年12月、インドで集団レイプ・殺人事件が発生した。
この事件から3カ月で女性観光客は 35%減った。
■ ニューヨークタイムズ紙によれば、デリーでは2012年に600件ほどのレイプ被害が届けられている が、犯人の男性が起訴されて有罪になったケースはたったの1件だった。
《2014年》
■ インドの首都ニューデリーで呼吸器疾患の症状を訴え、病院に駆け込む患者が急増している。 中国よりも大気汚染が深刻で、ニューデリーでは最大で年間1万6200人が早死にするとされる。
■ 覚醒剤密輸、警察庁幹部は「日本が密売先として狙われている」と指摘する。 密輸元としてはメキシコ(16%)、中国(15.1%)、インド(13.4%)、ケニア(5%) ウガンダ(5%)で約5割を占めた。
近年はメキシコが多かったが、昨年はインドも増加傾向。
《2015年》
■ 邦人女性レイプで5人逮捕=ガイド装い接近、1カ月監禁 |
インド警察当局は3日までに、日本人の20代前半の女性研究員を1カ月にわたって監禁し性的暴行を加えたとして、インド人の男5人を逮捕した。
地元警察などによると、容疑者のうち日本語を話す1人が2014年11月下旬、東部コルカタで旅行ガイドを装って女性に接近。 仏教の聖地ブッダガヤなどに連れて行って性的暴行を加えた上、女性の銀行口座から7万6000ルピー(約14万5000円)を引き出させて強奪した。女性はその後、12月下旬まで近くの民家で監禁され、複数の男から繰り返し暴行を受けた。
インド政府は相次ぐレイプ事件を受けて、2013年に性犯罪を厳罰化した。
しかし、女性を狙った性犯罪は後を絶たず、外国人観光客が被害に遭うケースも多い。
インドではようやく性犯罪を厳罰化しているが、レイプ事件が後を絶たず、外国人旅行者が被害に遭うことも多い。
日本の外務省はホームページで「女性への性的暴行」について、以下のように注意喚起している。
「インドにおいては犯罪の中でも性的暴行事件は高い水準で発生しており、最近では外国人女性をねらった事件も増加しています。
デリー、アグラ、ジャイプール、ブッダガヤ等では、邦人女性旅行者が複数のインド人に性的暴行を受けた上に金品等を奪われる事例が発生しています。
女性の単独行動や夜間の外出、夜間のオートリキシャ等の利用は危険であり、避けるようにしてください」 |
■ 深刻なインド大気汚染、6億人超の寿命3年縮む 基準値10倍 |
インドは首都デリーを筆頭に大気汚染が深刻化している。同国の非政府組織(NGO)「化学環境センター」と環境保護団体「グリーンピース」が今年実施した調査によると、デリーの大気汚染は世界保健機関(WHO)が安全とする基準の10倍に達することがわかった。現地経済紙フィナンシャル・エクスプレスなどが報じた。
同調査は今年1月23日から2月12日にかけ、デリー市内の5カ所の学校で行われた。調査結果によると、5カ所で測定された微小粒子状物質PM2.5の濃度は最大で1立方メートル当たり209〜253マイクログラムとなり、WHOの基準である同25マイクログラムの8.4〜10.1倍となった。
PM2.5は肺気腫やがんの原因になるとされ、特に身体機能の未発達な子供が影響を受けやすく、ぜんそくや気管支系の疾患にもつながるともされる。グリーンピースはデリーの汚染状況が中国の北京よりも深刻だと指摘。「濃度の高い日の公的な対策がなく、住民の自衛に頼っている」と述べ、デリー当局、中央政府が行動を起こすべきだと訴えた。
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